"** year-old gentleman with no significant past medical history presented to the ER with 3 days history of high fever up to 102F, headache, nausea/ vomiting, and diarrhea.
Lumbar puncture showed pleocytosis..."
病院での朝のカンファレンスの一コマ。
「特に大きな既往のない○○才男性。
3日前からの悪寒を伴う発熱、頭痛、嘔気・嘔吐、下痢でERを受診。
腰椎穿刺では細胞数が上昇しており、、、」
いわゆる髄膜炎を呈した症例。
普段であれば、細菌性、ウイルス性、結核性、薬剤性、、と鑑別が広がるところ。
ただ、この時期のテキサスでは、まずこのウイルスが頭に浮かびます。
West Nile Virus (WNV)
今年はテキサス州でWNVがまさに大流行しているのです。
■テキサス州におけるWNVの報告
アメリカ疾病予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)によれば、テキサス州の2011年の罹患数は27例(うち2例死亡)のみ。
ところが、今年2012年は現在までですでに888例(うち35例死亡)という大流行に見舞われているのです。
全米での報告例が1993例ですので、実に44.6%がテキサス州ということになります。
なかでも、Dallas County(ダラス郡)では現在までに244例の感染者が報告されています。
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ちなみにヒューストンのあるHarris County(ハリス郡)では14例。 |
ダラスでは、昨年の冬が非常に温暖だったこと、今年は雨が多かったことから、媒介する蚊の繁殖に最適だった、と推測されています。
■WNV感染症とは
さて、ここで少し勉強しておきましょう。
WNVは蚊に媒介されるウイルスです。
通常、人間に感染したとしても、80%は無症状で経過します。
ただし、残りの20%ではさまざまな症状を呈します。
症状があるものは臨床的にさらに以下の2つに分類されます。
Non-Neuroinvasive Disease/ West Nile virus fever(ウエストナイル熱)
蚊に刺された後、2-6日の潜伏期間を経て、以下の症状が出ます。
- 発熱
- リンパ節の腫れ
- 嘔気・嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状
- 筋肉痛・関節痛
- 頭痛
- 発疹:特に胸や背中にでき、2-7日ほど続きます
などです。
一番の特徴は、脳炎、髄膜炎、脊髄炎などの中枢神経の病変がないことです。
ですので、非常に経過は良好で、命にかかわることは稀です。
Neuroinvasive Disease(ウエストナイル脳炎・髄膜炎・脊髄炎)
一方、中枢神経に病変がある場合には、予後が悪くなることがしばしばです。
以下の3つの病態があります。
- 脳炎:発熱、意識の変化、麻痺、痙攣、感覚の低下、手足の異常な動き、など
- 髄膜炎:頭痛、首の痛み、など
- 脊髄炎 :麻痺など
残念ながら確立した治療法がありませんので、
「極力、蚊に刺されない努力をする」
ことが重要です。
発症のピークは過ぎたようですが、まだまだ油断できませんので、外出の際には注意するよう心がけましょう。