数日前からの38度の発熱と湿性咳嗽、咽頭痛。
感染症科の私としては
「まあ風邪だろう」
とろくに診察もせず高をくくっておりました。
ところが、今日の夜中、一緒に寝ている娘が
「寒い」
といってガタガタ震えだしたのです。
毛布を掛けてもガタガタ震えが止まりません。
医学的には「悪寒戦慄(Shaking Chills)」といい、体中を菌が回るいわゆる「菌血症」の所見です。
熱も39.5℃まで上昇。
咳も一向に治まっておらず、聴診器で診察したところ、なんと背側の左下肺野にInspiratory crackle(吸気時のラ音)が聞こえます。
典型的な肺炎の所見です。
「Pneumococcus(肺炎球菌)では一回だけShaking Chillがあるんだよ。」
東京でよく一緒にカンファレンスを開催させていただいた、私の尊敬する元沖縄中部病院院長のM先生の談。
朝になって早速小児科に予約を入れ、受診しました。
さて、担当のドクターが診察した際には、ちょうど熱が下がっています。
「元気そうだし、特に音も聞こえないわね。風邪じゃないかしら。」
と言うので、
「とんでもない。私は感染症科の医者だ。ここに音が聞こえるだろう。ぜひX線をとりましょう。」
と主張。
医者としてみれば、こういう厄介な患者や患者の家族は、結構面倒くさいものです。
ただ、娘のことですので、こちらも必死です。
「わかりました。でもこの建物では撮影できないので、まず血液検査をして白血球が高かったら考えましょう。」
とのこと。
よく研修医には
「白血球やCRPといった非特異的なものに頼らずに、問診や身体所見から診断するように」
と口を酸っぱくして指導している私にとっては、聞き捨てならない言葉でしたが、あまり荒立てても仕方ないので、お願いすることにしました。
「24.9(24,900)もある!これは重症よ!すぐにX線をとりましょう。」
白血球数を見て驚くドクター。
兎にも角にもX線を撮影してもらえることになり、隣のTexas Women's Hospitalへ移動。
やはり左下肺野に淡い浸潤影がありました。
ということで肺炎の診断で、第3世代セフェム系の抗菌薬を10日間処方。
子供とはいえ、油断せずに普段からしっかりと診察せねば、と反省した一日でした。
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